事務局より
雁鳴きフォーラム初!阪大ワンゲルOBの原氏を迎えてのコラボレーション。ミニ句会をライブで開いていただいて、参加者全員、句会の面白さを体現することができました。

中田 典男さん(19期)
句会という遊び ~雁鳴き版~

注)事前に、参加者には以下のようにレジュメが出されていました。
① 他の韻文にはない「座」のコミュニケーション、それが句会
② 出句後は、自分の作品が「公共財」になる特有の面白さ
③ 季題(季語)の豊穣な世界
④ 句会の進行
1. 出句
2. 清記
3. 合評(がっぴょう)
4. 披講(ひこう)
5. 主宰講評(原さんに務めていただきます)

※ 実際の句会の様子をライブで行なう、「参加型」の雁鳴きです。
ワンゲルに関わりのある季語で1句、自由題で1句の計2句の
ご用意をお願いします。
※ 句の良し悪しを問うものではありません。あくまで、上質な知的エンターテイメントであり、コミュニケーション空間である、句会という「場」を体験することを狙いとしていますので、ご安心ください。
※ 因みにワンゲル関連で使えそうな季題を下記に例示します。
青嶺(あおね)・登山・山小屋・雪渓・滝・ご来迎・雲海・清水・滴り・茂り・泉・汗・朝焼け・夕焼け・夏霧・山開き・炎天・雷・夕立・虹・日焼け・草いきれ・南風(以上夏) 山笑ふ・霞・朧・薄氷(うすらい)・春の雪・残雪・芽吹く・東風(以上春) 霧・月・水澄む・山粧ふ(やまよそおう)・紅葉・鹿・猪・爽やか・鰯雲(以上秋) 雪・凍滝(いてだき)・氷柱・氷瀑・橇・スキー・スケート・雪山・枯木・枯野・吹雪・凍てる・悴む・山眠る・雪女・流氷・隙間風(すきまかぜ)・木枯らし・北風(以上冬)

*コピーライターとして、広告業界に勤めている。作家の小林恭二さんの「俳句というたのしみ遊び」という本がきっかけで、職場の仲間と句会を始めた。現在、NHK俳句に出演されている西村和子さんに指導を受けた。
*今回の雁鳴きフォーラムでは、ミニ句会として参加型という形をとってみたかったのと、参加してもらうことによって、句会のコミュニケーションとはどんなものかを感じてもらいたい。お手伝いいただく阪大ワンゲル9期の原孝雄氏は句会仲間。俳号は川雀(せんじゃく)。自身の俳号は無麓(むろく)。




原(川雀)氏




句会の進行(今回は実際の句会よりも句数は少ないが、手順は実際の句会と同じ。)

*参加者は用意してきた2句を、短冊に一句ずつ書き無記名で提出。集められた短冊を一旦シャッフルする。
*シャッフルされた短冊を各人に配りなおす。用紙に配られた句を、清記用紙に書き写し、短冊は封印する。この時点で、句は匿名のものとなり、この句会の場の共通財産となる。各人は、自分と他の人の持つイメージが異なるということを知る。
*清記用紙を、隣の人へ回していく。メモに、良いと思った句を書き写す。
*良いと思った句の中から3句、選句用紙に書き写す。名前を記入して提出。自分の作品は選ばないこと。
*自分が一番良いと思った句について、理由とともに感想を一分述べる(合評(がっぴょう))
*互選の披講(ひこう)。主宰者が選句用紙を読み上げる。自分の作品が読み上げられれば、作者は名前を名乗る。選ばれた人は素直に喜べばよい。選ばれなかった人も、選するほうの目が伏し穴だ、と思っておけば良い。
*主宰講評。


短冊を提出する様子

清記用紙を集める


実際の選句用紙


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主宰講評
■印象に残った句
豊作の 願いかなった秋祭り
金木犀 匂う夜道に 母思う
茅葺の 一つ家埋める そばの花
若き日の 風吹く雁の 声聞けば
つるべ落ち 靴音急ぐ 幕営地
いわし雲 空の海に 浮かびつつ
陽をあびて ほほえむように 春の雪
新じゃがを 皮ごと入れる 山カレー
斑鳩は 黄金の稲穂で 輝けり
芒原 秋日をうばひ きったりし
紅葉を 浴びて進める 登山道
六甲に 沈む夕日と 秋の雲
満点の 星降りそそぐ いただきに
赤牛の 眼懐かし 秋桜
山開き 空への道を 登り行く
山開き 緑の山に 名を呼ばれ
帰り道 ふと足とまる 金もくせい

■アドバイス
金木犀 匂う夜道に 母思う
↓(動詞が二つあると重いので、こうしてみてはどうか)
金木犀 匂う夜道に 母のこと

つるべ落ち 靴音急ぐ 幕営地
「つるべ落ち」は正しくは「つるべ落とし」という言葉なので、五七五からは外れるが、「つるべ落とし」のままでよい。一般的でない言葉は俳句では使わないほうが良い。
俳句では情感を入れすぎると重くなるので、客観的にみて写生する。靴音急ぐというよりは靴音早しとすると動きが出る。

つるべ落とし 靴音早し 幕営地

いわし雲 空の海に 浮かびつつ
↓(五六五になっているので)
いわし雲 空いっぱいに 浮かびつつ

帰り道 ふと足とまる 金木犀
↓(五七五に必ずしもならなくても良いが金木犀で終わると重たい感じがするので)
帰り道 金木犀に 足をふと

秋雨や 霧けぶりたる 比良の里
(秋雨と霧という季語が二つ重なるのは絶対悪ではないが、印象が散漫になってしまう)

秋雨の 煙立つなり 比良の里

若き日の 風吹く雁の 声聞けば
俳句には挨拶句というものがあるが、雁鳴きフォーラムの場においてこの句は良い句だと思う。



参加者の感想・質疑応答
* 「出句後は、自分の作品が公共財になる」とレジュメにあったのを疑問に思っていたが、実際に体験してみると、自分の作った句が手元を離れて、他の人の句と一緒に、この場の公共ものとなるという感覚が体験できた。

Q 俳句と川柳の違いは?
A. 川柳は季語がなくて良い。俳句は季語を中心に詠む。
俳句は名詞の文学。川柳は動詞に重きをおく。川柳は風刺もある。

* この会に参加するにあたってNHKの俳句番組を観たが、面白くて最後まで見た。

Q 季語は勝手に作ってはいけないのか。
A. いけない。季節にも決まりがある。例えば「山粧ふ」は秋の季語と決まっている。「山開き」は夏の季語。
歳時記によって、季語と認めているもの認められていないものもある。歳時記をみると、思わぬ発見ができるので面白い。

Q 一般の句会では、あらかじめテーマ(題)は決まっているのか
A. 決まっている時(兼題=兼ねてより出す)、その場で出される時(席題)の二種類がある。

* 盗作は話題にはならないのか
A. 句会でお互いに偶然同じ句をつくることはよくある。

Q 歳時記は誰が編集したものか
A. 高浜虚子などが季語を集めて解説している。
十、二十集かそれ以上あるのではないか。歳時記とは季語の辞典。季語は数千から一万あるだろう。
だんだん季節感がなくなっているので季語で使えなくなった
言葉もある。カタカナを使った新しい季語もある。










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