事務局より

日本の高度経済成長時代に社会人生活を始められた鎌田さんは、本屋のかもし出す雰囲気が大好き。時代背景と愛読書を絡めて来し方を時を追って語ってくださいました。人を驚かせるようなできごとはないけれど、人生のそれぞれのステージで、輝かれていた日々を興味深く聞かせていただきました。


鎌田 敏彦さん(3期)

「カウンセラー生活 − その前・その後」

〜黄昏時のおしゃべり: 人間観察学やカウンセラー技法など〜


はじめに

何事もきっかけや出会い次第: ワンゲルも会社生活もカウンセラー生活も。

演題の解題: 人生の四季(年齢的に秋の季節)。

荒川岳放談: 合宿で荒川岳での、皆で車座になって語り合いの思い出。

仕事でのモスクワの夜(“黄昏時のおしゃべり”)。

ヘーゲルの名言: 「ミネルヴァの梟は夕暮れに飛び立つ」

今は人生の夕暮れ、思索にふさわしい。

趣味は本屋通い。本屋の空気、思いがけない本との出会いが楽しみ。

1.社会人生活のスタート期: 1964

会社選びは、坂本藤良「日本の会社」(光文社)を読んだことから。就職のきっかけは本社が実家近くにあったことから。

入社は東海道新幹線開通・東京オリンピックの年(1964)

雑貨輸出をしながら、輸出振興、円変動為替制移行(71年)、オイルショック(73)などを経験。日本は輸出振興途上で商業英語、コレポンの全盛期。

司馬遼太郎の「坂の上の雲」(1969年から1974年まで全6巻)楽しむ。

1973年から3年間ドイツ駐在。ドイツで自動車免許をとりアウトバーンをドライブしたのは忘れられない思い出。

2.ソ連商売12年・モスクワ詣で: 海外事業部で1976年から450回行ったり来たり

堀田善衛「19階日本横町」出版後の「ソ連邦経済五カ年計画」の時代。

ウクライナホテルが日本商社の駐在員事務所。閉鎖的な鉄のカーテン時代。

クレムリン・ウォッチャーの活躍時代(ブレジネフからゴルバチョフまで四代の書記長)。

ソ連邦パイプライン建設工業省とラズノ公団詣で(商談・技術交流・見本市など)。

会社の年商1000億のうちに100億を稼ぐビジネスのソ連担当。

ソ連商売を離れてから1年半は亀山工場勤務。

1989年秋、マッキンゼー社のコンサルティング結果により大幅な社内機構改革あり。   
事業部制(製造、技術、販売を一体化)が開始。

3.人事評価参加の時代

工業材・電子材事業部時代は東京(4年間単身赴任)。企画担当として、人事評価に初めてかかわる。人事部時代は大阪。この頃カウンセリングの勉強を始める。

河合隼雄「心の処方箋」との出会い: 人事評価に関わり始めたときに読んだ。

茨木市の生涯学習センター(カウンセリング、漢詩、歴史など受講)に通う。

「知識・常識・教養は一日にして成らず」

4.再就職支援カウンセラー生活(2002年〜2005年)

「産業カウンセラー」、「キャリア・カウンセラー」講座受講、資格取得。

キャリア・カウンセラー資格: 就職氷河期時代に厚労省の肝いりで始まった制度の1期生。経歴書は暦年シート形式からキャリアシート形式(職務経歴書)へ移行しはじめた時期。

偶然・偶然のご縁とお陰でカウンセラー生活へ(個別面接やセミナー講師など)。

「傾聴・受容・共感」(カール・ロジャース(米国)提唱)の実践: 人間尊重。

「相性good chemistry」の探求。面接を受けるには、心を開くことが前提。

カウンセラーをしてみて:

  どれほど資格を持っていても実務経験がなければ雇ってもらえないのが現実。自分のキャリアを生かした資格取得を考えたほうがよい。

  新卒で就職するのがベスト。

  人と人との関係で成り立つ仕事なので、国家資格はない。大学院出でないと臨床心理士はとなれないが、臨床心理士になっても就職先は少ない。

  カウンセリングや経歴書添削を受ければ、それでおしまいという人がほとんど。お役所は投資効果の少ない事業。日本の雇用の3割が縁故紹介という現実がある。

5.お仕事リタイヤ後

「ボケ防止(株取引)、退屈防止(読書)、ひきこもり防止(飲み会)」の日々。

京都シティ・カレッジ、各種カルチャーセンター(梵字・禅・漢詩など)。

詩人・英文学者の加島祥造(元横浜国大教授)「タオ・老子」を愛読:

彼は英語訳の「老子」を読んで、その簡明さに感動して、この書を著す。

哲学の巫女・池田晶子「考える日々」を愛読:

哲学 = 知りたいと思い、自分で考えること。

哲学がわかる = 「自分が知らないこと」を知っている。

質疑応答(現役部員よりの質問)

人事担当者として、就職試験の面接のポイントは?

好感度、期待度、歯切れのよさ

ワンゲル4年間、専攻語学(インドパキスタン語科)、外大卒で、今の人生に役立ったものは?

語学関係何もない。人との輪。人とのつながり、友だち、偶然の出会いがすべて。

資料より

◆朝日新聞「天声人語」(07.7.15)からの引用。
文芸評論家の向井 敏さんの「読書人の人生」(岩波文庫の帯の色)
“ゆめ見るひとみで緑帯(日本文学)、むすめざかりは赤い帯(外国文学)、
朱にまじわって白い帯(社会科学)、― 青い帯(哲学や歴史)―、
行きつく先は黄色帯(日本の古典)”

◆哲学者ヘーゲルの言葉
“ミネルヴァのふくろうは、夕暮れに飛び立つ”

◆ヒンドゥ教の人生観
“学生期、家住期、林住期、遊行期”

◆詩人・茨木のり子の詩:
自分の感受性くらい

ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを 近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを 暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった

駄目なことの一切を 時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ


◆中津燎子「英語と運命」からの“日本人論”を抜粋引用 
英語発音研究者60年、日本人気質の原点は「はにかみ」、「ためらい」、「人見知り」にありと指摘。これから先は「判断の先送り」、「決断の後回し」、「状況待ち」への悪い展開があり。更には、バブル後の日本人の思考は「きびしい現実をなるたけ甘くなる」ことに努力し、「耳ざわりのいい方針」だけを追求し、「結果責任を出来るだけあいまいにする」という状態が日常化したと分析する。

◆最近の就職活動状況について
新卒者と再就職・転職者の企業採用区分  正規社員と非正規社員の比率転換  若年離職者七・五・三の現実  組織内二・六・二の人事評価崩壊  市販履歴書の存在意義低下と「職務経歴書」評価重視  人材紹介・転職斡旋会社の実態  新規資格取得は就職有利か(実務経験の壁は厚い) コミュニケーション能力が問われる時代  就職バブル期・氷河期  労働の分類も変わる(肉体労働・頭脳労働・感情労働[謝罪])

◆カウンセリングの世界 

カウンセリング講座は大流行 精神科医と臨床心理士・カウンセラーの役割分担、心理学・カウンセリングの流派いろいろ(フロイト派、ユング派、その他もろもろ) 、ラポール・自己開示・カタルシス カウンセリングはどう有効か・儲かる仕事か  ニート・フリーター・パナサイトシングル・ひきこもり・おたく・希望格差社会、マズローの五段階欲求説(生存欲求→安全欲求→所属欲求→承認→自己実現欲求) うつ病「心の病」・自殺の増加と職場の「メンタルヘルス」(悩みを自分で抱え込みすぎ) 今や“離婚カウンセラー”登場の時代(15,000円/2時間)

◆人間観察学いろいろ
セレンディピティ(偶然の幸運): ノーベル化学賞受賞者、デュポンや3M
出会いいろいろ: 加島祥造と英訳本「老子・タオの世界」との出会い、高校数学教師・河合隼雄と「ユング心理学」の出会い、映画俳優・石原裕次郎のデビューと兄・慎太郎の売り込み、タレント志望・松井和代の11PMのスカウトとの出会い、読書家・企業経営者の平岩外四は木川田社長のお気に入り、江戸風俗研究家・杉浦日向子と江戸長屋のライフスタイル



以  上
(文責: 事務局)





















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