事務局より 日本企業の中国進出がまだ本格化しない時代から、長年にわたり現地の官民の人たちと接触しながら仕事をされてきたご経験をもとに、中国の社会・経済の実像についてわかりやすくお話しいただきました。 中国は一筋縄ではいかない、奥からいくらでも人が出てくる巨大な国、ひとつの世界、というご指摘は新鮮です。とてつもない、このような国と上手に付き合うために、日本も心しなければならないでしょう。 北村さんもおっしゃっていましたが、今回のお話は現役の学生の皆さんにこそ聞いてほしい内容でした。春合宿の前日で欠席であったのは残念。この記録を読んで今後の参考にしてください。 |
北村 庄司さん(8期、中国語学科) 「中国: この不可解な国を理解する為に」 1. 私と中国との出会いと今日までの軌跡
2. 松下幸之助の「中国観」 松下幸之助は1979年、80年に中国を訪問。 “中国は一国でひとつの世界” ①様々な要素を内含している。 ②行く先々で異なる人々の異なる想いと夢。異床異夢。 ③とてつもなく広大な国土、多民族国家。 ④巨大な人口、経済的潜在力。自給力。軍事力。人的資源。 ⑤農業大国: 70%が農民。巨大な労働予備軍。農業のGDP構成比は一桁: 澱み(停滞)と淀み (保守性、無知) 3. 中国人の性格上の特質 (1) 旺盛な独立心 「むしろ鶏頭となるも牛後となる勿れ!」 「人に構われる、使われるのが大嫌い」 「先ず稼ぐ、儲ける!大将に成る。」(向銭看!=向前看) (2) 融通無碍 「大将になる為には、何事にも耐える。あらゆる人脈を求める。」 ネットワーク構築こそ蓄財の源(①血縁、②親族、③地縁、④宗族) 「法は破られる為にある。リスクは冒す。」(上面有政策、下面有対策) (3) 損得勘定 「儲けること=善」硬的道理(万人にとっての真実、真理)
5. 中国ビジネスのABC (1) 契約社会 書面第一主義(書き物以外は、信用できない社会) 信義と契約(「信義」を裏書するものが「契約」)。欧米社会と同一。 ① 表見代理: 社印、公印が押捺されていれば、法的効力を有する。 ② 人知と法治 1. 法体系は整頓、整理完了。荒削りで半ばザル法。 2. 政法委員会(委員長は共産党書記)が判決内容を決定。 3. 人民法院(裁判所)は人民代表大会(行政)の下部組織。 「商人は金で時間を買おうとし、官僚は権力を高く売りつけ富を得る」 「故にコネを求めて走り回り、巨大汚職が根絶できない社会構造を生む」 「法の解釈に違いがあっても行政の意向に従わざるを得ず、従えば富を得る」 ③ マクロ(中央政府)とミクロ(地方政府)の戦い(利害攻防戦) ④ 法律上のローカルルール、地域限定ルール、法律制定と施行ルールとの時差 「試行条例」、「○○市における暫定条例」という名のリトマス試験紙的法令の発令。上手くいけば全国的に施行。 施行後、数ヶ月から1年前後して「実施条例」や「実施細則」という名の運用ルールを定める。その間に問題点を抽出し、想定される問題を可能な限り解決して公平感の確保を目指す。 6. 「中国の未来像と日本の対処策」に関する私見と予測 (1) 日中貿易>日米貿易(金額)の転換点 (2) 環境問題、省エネ技術両面と既存産業面のソフト技術の新規需要開拓 (3) 中国経済の自由経済圏へのリンケージの拡大と深化 (4) 米国経済への信頼感の揺らぎと国際政治経済の多極化傾向の加速化 (5) 見えない中国の崩壊シナリオ。ゆっくり上げなければならない農民の生活水準 (6) 近くにある巨大市場は日本にとって米国以上に美味しい市場 (7) Give & Take: 太らせてゆっくり味わえ!“Win-Win”関係の長期的構築 (8) 日本の絶えざる技術革新力保持こそ最大の武器 ①メカトロニクス、②マイクロエレクトロニクス、③環境保護技術、④省エネ技術 日本の持っている技術、管理能力は中国に負けない。 地下水汚染・黄砂・砂漠化対策などは日本のビッグチャンスである。 日本の自覚 「匠の技」の優位性確保が日本の東アジア経済圏での生命線! 日本は「身の丈を弁えよ。中国、インドとは国体が異なることへの自覚忘れること勿れ!」 中国のリスク 食糧確保、水の安全確保! 経済成長力の鈍化とインターネット開放の悪影響伝播リスク 貧困層農民への適切な所得分配政策の成否 以 上 |