事務局より
総会、追い出しコンパなどの席で、現役生にいつも「新聞を読みなさい。世の中の動きを見なさい」と発破をかけられる
和田さん。
ご自身は銀行、総合研究所を退職された後も、新聞記事の中でついつい、金融、特に国際金融の欄に目が移るとのことです。今回はサブプライムローンについて解説いただきました。

和田 肇さん(6期)


「サブプライムローン」



私は大学の一般教養で金融論を選択し、父が戦前銀行員でもあったことから、銀行に就職し、外国為替、国際業務、海外勤務の道を歩んできました。銀行、総合研究所を退職後もついつい新聞記事の中で金融、特に国際金融の欄に目が移ります。

人・物・金(カネ)のグローバル化に伴い、ある程度の金融知識を持っていないと世界の動きが理解し難くなってきました。現在、米国の金融界は戦後最悪の金融不安に直面し、その影響はエネルギー、穀物などの値上げを産み出しました。日本はバブル崩壊後、その処理に10年かかりました。米国も今後数年間は景気低迷を余儀なくされそうです。

私は、米国でサブプライムローン(注1)が問題化した昨年秋以降、その動きを追ってきました。欧米の金融界を不安に陥れたサブプライムローンはいつ頃から発生したのか?その原因は?住宅ローンの債権とその証券化とは何か?銀行界の信用収縮とは?犯人は誰なのか?日本でも将来サブプライムローンが発生しないのか?今後の国際金融市場を支配していくのはどの国々なのか?などにつき(元)実務家の立場から検証していきます。

(注1)サブプライムローンを新聞紙上では「低所得者向け高金利住宅ローン」と説明しているが、正しくは、「以前にカードローンまたは自動車ローンを利用した際に利払いを延滞した経歴を持つ人に組まれる住宅ローン」と説明するのが正しい。結果としては、黒人、ヒスパニック、低所得の白人が対象となる。






資料1-1 「The scheme of subprime loan」   

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資料1-2

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資料2:「Who is or who are to blame for the Subprime Mortgage Crisis?」

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「サブプライムローン問題を引き起こした背景」

1. 移民にとっては、家を持つことがアメリカンドリームである。政府は、持ち家制度普及のため、戦前より住宅金融機関が設立していった。

2. 政府機関による証券化は、1970年代より行われており、良質な住宅ローン債権のみを証券化しており問題は発生しなかった。

3. 2000年のITバブル崩壊後、01年の多発テロ発生以降、02年の企業会計疑惑により、不況が訪れた。03年のFRBによる低金利政策とカネ余り現象が住宅バブルを生んだ。

4. 金融機関による甘い融資審査、過剰住宅融資。

5. 悪質なモーゲッジブローカーによる金融機関への借入人の紹介。

6. 延滞歴のあるサブプライムローンに対して、保証会社であるモノラインが保証をつけた。

7. これらの金融商品に、格付け会社が安全度によって点数をつけたため、投資家達は安心して購入していった。

8. 資金のグローバル化により住宅ローンが抱えるリスク(信用、流動性、金利、期間など)を証券化という形で投資家に移転した。正常時には問題なかったが、一旦そのリスクが目を覚ますと全世界の金融界を混乱に陥れた。

9. さらにモノラインが、相次ぐ履行請求のため、資金繰りがつかなくなった。

10. 金融システムは財務的信頼関係の上になりたっている。参加者のなかの1社でも資金繰りにつまずくと今回のように、金融業界は疑心暗鬼となりパニックが起きた。



反省
・ 本来ならリスク分析の専門家である銀行家、証券業界が自分の策に溺れたのは皮肉である。彼らは実を見失い、虚を追いかけた。

・ 理性を失った金亡者の金融業界、ヘッジファンドの飽くなき利益追求。

・ 米国では戦後、中古住宅価格がほぼ上昇傾向にあったため、住宅神話がいつまでも続くとの金融工学担当者の前提が狂った。金融工学従事者は実務経験に乏しかったのではないか。

・ 格付け会社と債権発行人との癒着。格付け会社の格付け作業が甘かった。

・ 金融工学の発達とともに金融商品が複雑化し、投資家が商品を理解できなくなった。

・ そのため、投資家全員が格付け会社のレーティング(格付け)に頼りすぎた。

・ 住宅バブルの中、関係者全員が金亡者化して、問題は発生した。

・ 本来なら貸してはいけない人に融資した。不用意に貸すと、貸し手も借り手も不幸になる。

FRBの前議長であるアラン グリーンスパンは、2008年1月17日付け日本経済新聞の「私の履歴書」の中で次のように語っている。『市場には時に熱狂しては、おのずから破裂するというリズムがある。バブルは起きるものだ。それを予測したり、正常な状況で取り除いたりするのは不可能なのだ』








懇親会の様子








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